2011年5月19日木曜日

バハカリフォルニアの赤い砂 vol.2

無事にメキシコへの入国を済ませ、国境の町で一晩を過ごした僕。北米大陸に根ざし、コルテス海を抱え持つようにあるバハカリフォルニア半島を走るべく、南へと走り始めるのでした。


ティファナの町を後にし、次なる町エンセナダへ向けて走ります。今日も天気がよく、雨の心配はなさそうです。バハカリフォルニアには半島でありながら国道1号線が走っていて、それはこの国境の町から半島先端のサンルーカス岬まで続いています。もしあなたがバハカリフォルニアを縦断しようとするなら、きっとこの1号線を使うことになるでしょう。もちろんそれ以外の道もあります。しかしそのほとんどが舗装されていなかったりします。僕も、1号線を選びました。というかいくら半島と言えど南北に1200km以上あるそれを1週間という日程で走りきるには、それ以外の選択肢が思い浮かばなかったのです。

メキシコのガソリンスタンドはこのPEMEXのみ。

とにかく目的地のラパスまで一本道。と、安心していたのがいけなかったようです。標識通りに進んでいたと思ったら、ロサリオの町を抜けたところで突然高速道路の料金所が現れ、結局そこからエンセナダまでの区間を合計53ペソもかかって走ることになってしまいました。僕のバイクの場合、高速道路に乗るメリットがほとんどない(むしろデメリットの方が多い)のでこれは失敗。きっと事前に案内標識があったのでしょうが、スペイン語で書かれたそれはどれを見ても解読不能で、まぁ仕方ないやと高速道路をのんびり走ることにしました。

エンセナダで高速が終わり、巨大なメキシコ国旗がたなびく公園で休憩をし、銀行で手持ちのドルをペソに替え、まだまだ南へとのびる国道をひたすら走りました。南下するにつれ気温はうなぎのぼりで、見渡す限りサボテンだらけの砂漠地帯ではついに気温が30度を超え、容赦なく肌を刺す陽射しに、いつものどを涸らしていました。

サボテンは予想以上におおきかった。

サボテン以外何も見つけられない道。
そして暑い。

国道は途中いくつかの小さな町を抜けていきます。しかし南下するほどにその規模は小さくなり、町らしい町がなくなっていきました。それはもはや集落といった方がしっくりとくるほどです。ガソリンスタンドや個人商店があればまだいい方で、ちいさな教会があるだけの町もありました。民家はどれもコンクリートで固めた箱型をしていて、高台には簡素な教会がひっそりと町を見下ろしています。そしてそのどれもが砂埃の舞う町でした。

国道はかろうじて(というレベルで)舗装されていますが、そこから脇にのびる道はすべて未舗装で、車が走るたびに赤茶けた細かい砂が舞い上がり、乾燥した気候のためかそれがいつまでも空中を漂っているのです。1日の工程を走り終えると、決まってバイクもヘルメットも、そして自分自身もなにもかもがざらついていました。

しかしそんな小さな町でさえ、水が買え、ガソリンが入れられ、木陰で休憩ができるだけでありがたいものでした。そして走り疲れて休んでいると、大抵誰かに話しかけられました。といっても話の内容はほぼわからず、どこから来たのか?どこへ行くのか?などの簡単な質問に答えるだけで精一杯。それでも皆笑顔で応援してくれ、中には屋台でおいしい海鮮スープをご馳走になったりもしました。

小さな教会が町を見守っていた。

水を買う。走っていると、とにかくのどが渇く。

カフェ。
と、ガソリンスタンド。

こんな感じで給油された。

海鮮スープをご馳走してくれた屋台のおやじ。
とても陽気だった。

バハカリフォルニアのちょうど真中あたり。折り返し地点と決めたゲレーロネグロの町に着いたのは、ティファナを出てから4日目のことでした。途中パンクをしたり(実はアメリカを抜けるまでに2回、メキシコに入ってから1回パンクしている)、危うくガス欠になりかけたり、悲しい事故を目の当たりにしたりしながらも、なんとか到着することができました。

ずっとキャンプ続きだったので今日はホテルを取ろうと町のメインストリートにあるホテルやモーテルの料金を手当たり次第たずねてまわりました。しかし、どこも予想以上に高いのです。ほとんどのホテルが300ペソ。なかには500ペソなんてところもありました。ティファナのホテルで250ペソだったのに、こんな小さな町(小さいから?)で300ペソは高い。ホットシャワー付きのキャンプ場が14ドルであるようですが、気持ちはすっかりベッドでぐっすりだったので、町の中をさらに進み、どうにかこうにか250ペソのモーテルを探すことができました。

外観も部屋もお世辞にもきれいとは言えない(はっきり言えば汚い)のですが、もうここでいいやと了承しました。しかし支払い時になってドルで払えるか?と尋ねたら、なんとドルなら15ドルでいいと言います。なぜだ?銀行のレートでは1ドルが約11ペソだというのに、それではまったく計算が合わないではないか。計算は合わないけど、僕にとってラッキーなのでふたつ返事でOKしました。

今日の宿。
見た目はともかく、オーナーはとてもいい人だった。

なんだか得した気分で部屋に入り、荷物をほどいて久しぶりのシャワー。薄暗く、おもちゃのじょうろのような水量のシャワーでしたがそんなことはどうでもよく、ざらついた体がみるみるきれいになっていくことが爽快でした。ホテルの隣にある商店でビールを買い、そのままベッドに横になると気持ちの良い昼寝を。起きたら散歩がてらに遅い昼食と買い物に出ました。魚のフライのタコスは15ペソで、パンク修理用のパッチはみっつで10ペソ。言葉はまったく通じませんが、身振り手振りでする買い物もどこか楽しいものです。

暑い暑い。犬もぐったり。

タコス屋の看板娘。レジ番。

果たしてこの町も舗装されているのはメインストリートだけで、そこからのびる道はすべて未舗装でした。家も大地を均し、その上にコンクリートの箱をのせただけのような造りで、少し強い風が吹くと砂埃が舞い、店の中でさえ埃っぽいのでした。
それでもこの土地に生活している人々がちゃんといて、子供たちは声を上げて遊び、今日と同じようにまた明日がやってくるんだなと思うと、なぜだか僕の胸は静かに締め付けられるのでした。

つづく。

2 件のコメント:

  1. サボテンでかっ!ってかデカ過ぎ!

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  2. サボテン、予想以上の大きさでした。
    これだけ大きいのはメキシコ北部にしかないそうです。

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